腹式呼吸のやり方
みなさん緊張した時には心を落ち着かせるために「深呼吸」をしますよね。ではなぜ呼吸を深くすると心が落ち着くのでしょうか?
それは二点。「自律神経が整う」ことと「体幹の深層筋が緩む」からです。
「内臓の働き」や「血液の流れ」などの「意識してもできない身体の機能」をコントロールしている自律神経。この自律神経に自分の意識で直接働き掛けられる方法が呼吸」です。※自律神経の働きを詳しく知りたい場合は「自律神経失調症とは/4つの原因と改善法」のページに記してあります。
また姿勢不良やスポーツでの酷使によって「体幹の深層筋」は硬くなり縮こまっています。
肩コリは感じやすいですがお腹のコリは感じにくいもの。しかし「お腹の奥」が縮こまっていれば自然と姿勢も縮こまり、カラダも歪みます。また体幹がうまく働かないのでスポーツでもパフォーマンスが上がる訳がありません。
そんなときに体幹の深層に働きかける方法が「腹式呼吸」なんです。
腹式呼吸はお金も時間も掛からないのにその効果は高く、ストレスが多い毎日を送る人にとっては心と体をすばやくリラックスさせてくれる素晴らしい方法です。
ここでは「浅い呼吸の弊害」から「腹式呼吸」のメリット、そして「腹式呼吸のやり方」を他にはない視点から解説していきますので是非ご参考に。
1.やり方の前に「腹式呼吸の効果」とは
1-1.胸式呼吸の弊害
現代の生活では仕事や家事に追われ、長時間おなじ姿勢でパソコンに向かい、寝ても疲れが取れないまま朝を向かえるというバタバタした毎日になりがちですよね‥。
しかしそんな生活ではいつの間にか「胸式呼吸」と言われる「浅い呼吸」になってしまいます。※胸式呼吸とは「肩や胸の上下動で行う呼吸」のため肺が狭い範囲でしか膨らみません。
そのため体に酸素を取り込む量が減少するので「血液中の酸素量も少なくなる」という事です。これでは身体に栄養が行き渡らないも同然ですよね‥。
さらには他の細胞よりも「20倍もの酸素が必要」といわれる脳神経へのダメージは長い目で見れば計り知れません。
1-2.横隔膜の重要性
胸式呼吸では少なくなる「横隔膜の動き」ですが、実はこの横隔膜が非常に重要なんです。
横隔膜とは肺の下にあるドーム状の膜(筋肉)で、身体の中で肺とお腹を仕切っています。そして息を吸う時は横隔膜が下に下がることで肺が引っ張られて膨らみ、そのおかげで空気が取り込まれます。また吐く時には横隔膜が上に戻ることで肺が縮み、空気が押し出されます。
肺自身には筋肉が付着していないので、この横隔膜の上下動がメインとなって呼吸させているのです。
更にはこの横隔膜の上下動によって、その下にある内臓がプッシュされてお腹の中で動きます。これが内臓への「ストレッチ効果・マッサージ効果」になるので、便秘解消をはじめとする内臓の働きにも良い効果をもたらします。
しかし胸式呼吸ではこの横隔膜による内臓刺激が減るので「内臓疲労」の元になります。すると「なんかいつも身体が重いなぁ‥」と身体の中から感じるようになってしまいます。
あなたもイスに同じ姿勢で座りっぱなしでは疲れますよね?
腹式呼吸を行えるようにすると、このような内臓疲労からのストレスや自律神経の乱れも減らす事ができるはずですよ。
1-3.腹式呼吸とは
腹式呼吸を簡単に言うと「お腹を凹ましたり膨らませたり呼吸」です。
呼吸の時に横隔膜が下がるためには、その下にある臓器たちが移動するスペースが必要になりますよね。つまりお腹を凸凹させるのはそのスペースを作り出すことにもなり、横隔膜に連動させて呼吸を助けているという事ですね。
しかしこれが正しく行われない場合は「首や胸や肩の筋肉」を使ってなんとか肺を膨らませようとします(これが胸式呼吸)。呼吸は遠に繰り返す作業なので、腹式呼吸ができないとその分まで首・胸・肩が疲れるのは当然です。
その結果「首・胸・肩がガチガチ」になってストレスを感じ、また体幹の深層筋も硬くなるので腰・股関節・膝などへの負担も増します。そしてこんな大きなストレスが常に掛かっていれば「交感神経優位」が継続するのは言うまでもありません。
これを正しい呼吸、すなわち腹式呼吸に戻すことで「酸素も沢山摂り込める・カラダも疲れにくい・自律神経も整う」という良い効果が生まれます。もちろんこれはカラダが本来備えている機能が正常に働くだけなので、なんら特別なことではありませんよ。
またスポーツの場面でも首・胸・肩に力が入っていては良いパフォーマンスになる訳がありません。逆に腹式呼吸が日頃からできるようになると体幹が働きやすくなります。スポーツ方面に関しては別の機会に述べますが、体幹を鍛えているはずなのに軸がぶれる人は重心が上ずっている可能性が高いでしょう。
2.「腹式呼吸のやり方」は3ステップ
それでは腹式呼吸のやり方を次の3ステップに分けて簡単に解説していきます。
- 吐くことを意識
- 正しい身体の使い方
- 姿勢
2-1.まずは吐くことを意識
普通に呼吸をして吐いた後はまだまだ肺に空気が残っていますが、これをまずは全て吐き切るイメージです。それも一気に吐くのではなく口(鼻でもOK)から空気が漏れるような感覚で吐いてみてください。
すると肋骨が下がり、お腹が凹んでくるのが分かるはずです。これで普段の呼吸で使っていなかったお腹の奥の筋肉が働きます。
そして吐き切ったあとは自然にたっぷりと息が吸えるはずです。もちろん吸う時には凹んだお腹がそのまま膨らんでくるように鼻からスーッと吸ってくださいね。こうすれば横隔膜がきちんと上下に動くようになります。
さらに言えば「息を吸うときは交感神経(興奮)」が働き「吐くときは副交感神経(休息)」が働きます。ということは吐く時間を長くすると、それだけ副交感神経優位の時間が長くなるということですね。
例えば「3秒かけて吸ったら6秒かけて吐く」というように「吐く時間を倍」にしてみましょう。何秒が良いという決まりはないので、自分で呼吸してみて心地良い秒数が「良いやり方」と言えるでしょう。
2-2.カラダの使い方
「吐くのを長く」という事はよく耳にしますが「呼吸時のカラダの使い方」についてはあまり見かける事がありません。しかしこれが腹式呼吸のやり方にとても重要なんです。
先ほどの説明の通りに呼吸してみると、吐くのは簡単にお腹を凹ませて吐き切れたと思いますが、吸う時にはやはり肩・首に力が入っている人が大半だと思います。あなたはどうでしょうか?
たっぷり吸おうとした時に「肩と胸」が上がっている人は結局「胸式呼吸」になっているので気を付けて下さいね。。
大事なのはたっぷり吐いてからたっぷり吸った時も「肩・首は動かない(上がらない)」こと。そうすればきちんとお腹が膨れます。また胸(肋骨)については、上に上がったり反らせたりはダメですが横には広げたほうが良いので、お腹と一緒に「前後左右」に広げてくださいね。
初めは難しく感じるので無意識に肩に力が入るかも知れません。そんな時は両肩を一旦上げてからストンと落としてみると肩の力が抜けるのが分かると思います。肩が動くうちはまだまだ腹式呼吸ができていない証拠なので、時おりこうして力を抜くやり方がおすすめです。
2-3.姿勢
猫背の人は背中が丸くなっている事にばかり目を向けがちですが、実はお腹側が潰れている事も問題なんです。
胸が縮こまり、お腹も潰れている状態なので、先ほど説明した「横隔膜を使った呼吸」のできない浅い呼吸になります。
つまり「深い呼吸」をするためには姿勢を正す必要があるんです。実際に当整体にて「猫背矯正・歪み矯正」した人は「こんなに息が吸いやすいなんて!」と今までとの違いにビックリされます。
ただしここで注意して欲しいのは「胸を張ったり腰を反らせた姿勢は良い姿勢ではない」という事です。それでは胸・肩・腰に力を入れて無理やり姿勢を作っているだけなので胸式呼吸と同じです。
- まずは骨盤を立てる
- そのまま息を吐いていくとお腹が凹む
- そこで頭を背骨の上に乗せる(軽くアゴを引く)
- 頭のてっぺんにヒモが付いていて、天井から吊るされるような感覚で
- そのまま両肩を一旦上げてからストンと落とす
立ってでも座ってでもこれで良い姿勢の完成です。
そしてこのままの姿勢でお腹を凹凸させて呼吸をしましょう。はじめは姿勢の維持が苦しいかもしれませんが、呼吸に慣れてくると同時に姿勢維持にも慣れてくるはずです。こうして姿勢も同時に変えていく事が腹式呼吸のやり方には大切なんです。
またはじめは「あお向けに寝転んだ状態」で呼吸を練習すると、胸もお腹も広がりやすく余計な力も抜けているので、腹式呼吸を意識しやすいかも良いかもしれませんね。
3.「腹式呼吸のやり方」まとめ
私たちは普段無意識に(自律神経によって)呼吸をしていますよね。しかし生きている間は呼吸は絶え間なく続くので、一生の間に3~5億回以上も呼吸をする事になります。こんなに繰り返すのなら当然深い呼吸を沢山したほうがお得ですよね。
上記の「腹式呼吸のやり方」をきちんと意識できれば体幹の筋肉が働くので、肩・首・腰などの力が抜けてカラダが楽にあります。また深い呼吸1つで身体中にみずみずしい酸素が行きわたり、細胞が生まれ変わったように働き始めます。
「息」いう字は「自」と「心」という字を書きます。つまり息は「自分の心」を表すということです。
あなたも腹式呼吸で「使えるカラダ」と「整った自律神経」を手に入れ、心身ともに健やかに過ごして下さいね。
また更に身体を良くしたい人は「つらい不調もこれで改善!自律神経を整える12の方法」をどうぞ。
※当記事は私見であり、医学的根拠を保証するものではありません。情報の活用は自己責任にてお願い致します。