何とかシンスプリントを改善したいという思いから、自分でできる事を頑張っている人もいるはずです。しかしそんなシンスプリント対策として「自己流ストレッチ」をやっていても良くならない‥というお悩みをよく耳にします。
最初に残念なお知らせをしますが、ストレッチだけで重症化したシンスプリントを完治させるほどの効果は期待できません。
それでも悪さをしている筋肉を緩めれば痛みが減少したり、間接的に影響を及ぼす筋肉を伸ばすことでスネ周りに掛かる負担を減らせます。
またストレッチ単体で治そうとするのではなく、他の根本改善と同時にストレッチを行えば効果はアップしますし、改善後も続ける事で再発予防にも繋がります。このようにメイン治療ではなく「治療のサポート」として考えればストレッチは有効なカードと言えるでしょう。
ただし自己流ストレッチでは逆効果の場合もあるので、今までストレッチで治らなかった人はここで紹介するストレッチを参考にしてみて下さいね。
また最後にはシンスプリントを根本から改善して痛みを取り除く方法もご紹介しておきます。
1.シンスプリントにストレッチをする意味
1-1.シンスプリントが起きるメカニズム
シンスプリントとは脛骨の骨膜(すねの骨の表面)が炎症を起こした状態ですが、この炎症は筋肉の硬さによって起こります。その理由は、筋肉は骨膜に付着しているからです。
走ったりジャンプをする時には筋肉が収縮しますが、この時に筋肉自体が硬くなっているとその付着部である骨膜まで引っ張られるのです。何度も走る・跳ぶを繰り返すとその度に骨膜に負担が掛かり炎症を起こし、これが痛みの原因になります。
1-2.ストレッチで筋肉が緩むと血流アップ
間違ったストレッチ方法でむやみに筋肉を伸ばすと余計に負担が掛かってしまうので筋肉は柔らかくなりません。しかし優しく効果的なストレッチならば筋肉は柔らかくなります。
そして筋肉が柔らかくなればその中を通る血管への抵抗も減るので血流が良くなるんです。
炎症を起こした部分を修復するにはそのための材料(栄養)が必要ですが、この栄養は血液が運んでくれています。つまり血流が良いという事は痛めた部分を治す力がアップするということです。
このように筋肉が緩むと「骨膜に掛かる負担が減る」ことに加え「カラダの回復力が増える」という一石二鳥な状態になるのですね。
2.シンスプリントに効果のあるストレッチ方法
2-1.ストレッチに大切な3つの意識
(1)強さ
ストレッチの強さは「少し突っ張ってきたかな」と感じる程度で大丈夫です。それ以上にグッと体重をかけたり、無理に伸ばそうとするのは逆効果。強い刺激は筋肉にも負担なんです。
(2)ゆったりと呼吸
ストレッチの強さの目安として「ゆったりとした呼吸」を心掛けてください。強く伸ばそうとすると必ず息を止めたくなるので、そうではなくゆったりと呼吸できるくらいのストレッチにしましょう。
またゆったり呼吸をすると自律神経にも作用してリラックス効果もあります。リラックス時のほうが末梢血管が拡張して血行が良くなり筋肉に酸素・栄養が行き渡ります。
(3)伸ばしたら緩める
伸ばしっぱなしではなく「伸ばしたら緩める」を何度か繰り返してください。何秒間という決まりはありませんが、一度に何十秒と伸ばすのでなく心地良いくらいで数秒止めたあと一旦緩めます。
筋肉を伸ばした時ではなく緩めた時に血流が良くなるので、これを何度か繰り返すほうが筋肉が柔らかくなるでしょう。
2-2.シンスプリントに効く5つの部位
(1)ヒラメ筋
- 正座の状態から、片足を立てて前に出す
- そのまま重心を前に傾ける(胸で足を押す感じ)
体勢が苦しければイスやソファーに座りながら行います。腰かけてから片足をイスに乗せ、そのままつま先を自分のほうに引けば先ほどと同じ効果です。
ポイントは膝を曲げた状態でつま先を反らせる事。そうするとふくらはぎの奥(すねの骨周り)の筋肉が伸びます。
(2)後脛骨筋
- 同じように正座から片足を立てる
- 先ほど違うのは、立てた足の下(小指側)に5cmくらいの物を噛ますこと
- そのまま重心を前に傾ける
先ほどのヒラメ筋と同じ要領ですが、違いは小指側を反らせる事です。イスやソファーの上ならば、自分で小指側だけを引いて下さい。こうするとまた違う筋肉が伸びます。
このヒラメ筋・後脛骨筋はシンスプリント痛の原因となる筋肉です。
(3)腸腰筋
腸腰筋とは上半身(背骨)と下半身(太腿の骨)を繋ぐ筋肉です。これが硬くなると「姿勢不良」「足の運びが悪くなる」など体幹の筋肉が働きにくくなるので、その結果スネ周りへの負担が大きくなります。シンスプリント予防のためにもしっかりとケアが必要です。
- 膝立ちの状態から、片足を大きく前に踏み出す
- そのまま体重を前に移動していきます(背筋を伸ばして視線は前で、腰から移動する)
体勢が辛ければ、前に出した足のさらに向こうに両手を着いて行います。この状態から伸ばすほうの股関節を前足のカカトに近づけるように重心を前に移動すればOKです。
伸ばしたいのは後ろ足側です。股関節から、できればお腹の奥のほうまで伸びる感覚があれば良いでしょう。
(4)大殿筋(中殿筋)
お尻の筋肉は「立つ・走る・跳ぶ」など動きの中心となる大事な筋肉です(スポーツ選手はお尻が発達していますよね)。これが硬くなると姿勢(フォーム)が悪くなるので、大きな力を生み出せなくなりスネ周りの負担が増えます。
- イスに浅く腰掛けて、片足をもう片足の上に乗せます(足首を太腿の上に)
- そのまま上体を前に倒す(おへそを前に突き出すように)
座って行うのが苦しければ仰向け(上向き)でも行えます。寝た状態で片足を自分に引き寄せてくるだけです。
これでお尻が伸びると思いますが、お尻の筋肉は広い面積をもっているので、少し体勢を変えるだけで伸びる箇所が変わります。足を持つ位置や角度を変えたり、膝の向きを変える事で伸びる箇所が変わるのを感じながらストレッチしましょう。
(5)ハムストリングス
ハムストリングスとは太腿の裏側の筋肉のことで、下半身を後ろに引いたり、膝を曲げる働きがあります。この筋肉が硬くなるとやはりスネ周りへの負担が増えます。
- あぐら座りの状態から片足を開いて伸ばす
- 伸ばした足に上体を傾ける(おへそを太腿に着けるように突き出す)
つま先を起こして行うほうが伸びる感じがしますがこれは中を通る神経が伸びる感覚なので、つま先は前に伸ばしたままの方がハムストリングス自体を伸ばせます。余裕があれば両方行うと良いかもしれませんね。
2-3.痛みがある場合はストレッチ禁止
痛みとは「それ以上刺激しないで」という身体からのメッセージです。それを無理やり伸ばそうとすると更に負担を掛ける事になります。
逆に言えば少し伸ばすだけで痛かったり、安静時でも痛い場合は、ストレッチくらいではどうしようもありません。しっかりと根本改善を目指して治療を行うほうが良いでしょう。
3.シンスプリントを根本から改善する方法
少しでも早くシンスプリントを治すために、ストレッチ以外にもできる事があれば試したいですよね。他のページでも紹介してありますが、まずは今取り組んでいるシンスプリント対策が間違っていないかを確認してみましょう。「なぜ治らない?間違いだらけのシンスプリント対策5つ」に書いてあります。
正しいストレッチは有効ではありますが、それでもあくまでも痛み改善の「補助」や「再発予防」として考え、シンスプリント治療のメインになる程の効果はないというのは頭に入れておいて下さい。
やはりシンスプリントを治すには根本原因から改善するのが近道です。そのためにはまず「シンスプリント『本当の原因』は5つ」を読んで、どうしてシンスプリントになってしまうのかを知ることが大事です。また「シンスプリント治療5つの方法/プロの本音」を併せて読まれると良いでしょう。
あなたが思い切りプレーができ、悔いなく競技に打ち込める事を願って終わりとします。
※当記事は整体院の私見であり、医療機関によるものではありません。情報はあくまでも自己判断にて活用して頂き、シンスプリントになったらまずは病院に行かれることをお勧めします。